高田米治郎が”日々”の出来事や読んだ本について感想文を書きます。


by l-cedar
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<   2010年 02月 ( 12 )   > この月の画像一覧

警官の紋章

「警官の紋章 佐々木 譲 著 角川春樹事務所」
を読んだ。

米治郎の推薦度 ☆☆

”笑う警官”、”警察庁から来た男”、
佐々木譲さんの”道警シリーズ”の第3弾、”警官の紋章”だ。
米治郎には、珍しいハードカバーを読んだ。
”笑う警官”、”警察庁から来た男”は文庫本で読んでいた。
”笑う警官”が映画化され、見に行く前に、この2巻を復習した。
その後、我慢していた。
そろそろ、”警官の紋章”が文庫化されそうな時期である。
しかし、待ちきれなくなった。

”笑う警官”、”警察庁から来た男”、からの道警問題。
深い、「うーん、ここまで、書いて良いの?」というのが、
”笑う警官”、”警察庁から来た男”の正直な感想だった。
この”警官の紋章”、
さらに、「こんなところまで書いてよいの?」である。
「道警って、こんなに腐敗しているなんて、いくら小説でも、
言っちゃって良いの?」とハラハラする。

反面、このシリーズの主人公、佐伯宏一、小島百合、
津久井卓らのような”警官の紋章”を背負った警官を描く。

佐々木譲さん、”笑う警官”を書き始めたとき、
この”警官の紋章”まで書こうと、書き始めたのだろう、凄い。

映画の”笑う警官”、この”警官の紋章”を予感させていたことが、
これを読んでわかった。

小島百合巡査、冒頭での凄い活躍、”笑う警官”を読んだとき、
ここまでの”女性”とは思わなかった。
”体力”、より”知力”の女(ひと)だと思った。
しかし、両方ある女(ひと)だった。

彼女が警護する”上野大臣”、
実在の東京5区の自民党女性元大臣をイメージしたが、
ちょっと違った。

でも、この他にも出てくる
”こういうちょっとしたイメージの持っていき方”。

読者の心をつかむ筆致力だと思う、凄いと思う。
真面目な書き方だと思う。読者の側に立って、
どうしたら、面白いと思うか、親切な書き方だ。
こういう作家が良いと思う。読みやすい。
これが、ここが、佐々木譲さんの良さだと思う。

さあ・・・、
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by l-cedar | 2010-02-27 22:15 | 感想文

主婦の味方、無念・・・

池袋駅東口、主婦の味方”キンカ堂”、
2010年2月22日、東京地裁に自己破産を申請した。

うちの奥さんや、隅ばあさん、大ショックである。

布生地、、手芸用品、洋服、化粧品、100均、と、なんでもあった。
特に、生地と資生堂化粧品の品揃えは凄かったらしい。

今日、奥さんと池袋へ行ったので、店の前を通った。
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閉じられたシャッターには、たくさんの手紙が貼ってあった。
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ありがとう”キンカ堂”
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どこかが、再建してくれることを祈りたい。
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by l-cedar | 2010-02-27 17:19 | 日々

新幹線の席の幅-2

先日、新幹線の席の幅について書いた

R1@八王子さんから、「メジャーを持って測ってきましょう」
と、リクエストをいただいていた。
前回の出張のときは、まったく忘れてしまい、
新幹線に乗って、忘れていたことに、気がついた。

今回は、忘れずに、メジャーを持って行き、
測ってきましたよ。

東海道新幹線の新型車両、N700系、
3列シート、窓側のA席、通路側のC席、の座面の幅は
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”45cm”、

それに比べて、その間に挟まれたB席、の座面の幅は
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なんと、”51cm”、

その差、”6cm”もあった。

300系の時は、3cmだったらしい
ちなみに、新幹線で、隣に美人が来たことは、一度もない。

でも、米治郎、絶対に、”B席”には座りたくない。
だって、あの両側からの威圧感・・・。
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by l-cedar | 2010-02-27 17:03 | for ”鉄さん”

いつか陽のあたる場所で

「いつか陽のあたる場所で 乃南 アサ 著 新潮文庫」
を読んだ。

米治郎の推薦度 ☆☆

今回、22年2月の新潮文庫の新刊、
”サクリフィス”、”果断”、
そしてこの”いつか陽のあたる場所で”。
これだけ、同じ時期に、手に取る新刊が出てくるのは珍しい。

小森谷 芭子(こもりや はこ)29歳、この物語の主人公、
彼女の視点で、話は進む。
そして、その相棒、江口 綾香(えぐち あやか)41歳。
この一回り、歳が離れた二人の女性・・・。

二人には、人に言えない暗い過去があった。
しかし、暗い話かというと、全くそうではない。
二人の女性の心温まる人生模様だ。
しかも、その舞台は、東京の千駄木。
これだけで、食いつく人も多いだろう。

しかし、乃南アサさん、素晴らしい。
これは、新しいシリーズになるようだ。
”凍える牙”から成る”音道貴子もの”。
このシリーズ、実は、警察、刑事ものという”主”の
部分が注目されているが、実は、”凍える牙”以降の
短編ものの音道貴子の日常が、女性としての
細かい心の描写が良いのだ。

そして、それは、この新しく始まった、
たぶんシリーズものになるであろうこのシリーズにも
たくさん描かれている。

物語に最初の部分で、この”小森谷芭子”と”江口綾香”の
経歴は出てくるので、若干”ネタバレ”になるが、明かしてしまう。
二人は、”ムショ(刑務所)仲間”だ。
”小森谷芭子”は、所謂、お嬢様なのだが、大学生の時、
ホストに入れ込んでしまい、お店に通うために
伝言ダイヤルで知り合った相手とホテルへ行き、
睡眠薬で相手を寝かしてしまい、お金を取る
昏睡強盗を重ね、刑務所に入る。
一方、”江口綾香”はドメスティックバイオレンスの
夫が、自分だけではなく、やっとできた息子へ
害が及びそうになり、息子を守るために、
寝ている夫の首をネクタイで絞め、殺してしまい、
刑務所に入る。
そして、二人は、”そこ”で、知り合い、
出所後も付き合うようになる。

しかし、出所後、犯罪に走るわけではなく、
普通に暮らしていこうとする二人の努力、日常が描かれている。

”音道貴子”は、警視庁の刑事、
”小森谷芭子”は、刑務所から出所してきた元犯罪者。
だが、この二人に共通する”普通の女性”ではない点。
しかし、その”普通ではない女性”の中に、
"普通の女性"にありがちな”脆さ”や”悩み”や”日常”を
同じように描くことによって、
「ああ、こういうこと、あるある」と思わせながら、
共感を呼び、読者を引き込んでいく筆致力が、
乃南アサさんの真骨頂である。

さらに、”ボクの町”、”駆けこみ交番”のズッコケ新米巡査、
”高木聖大”が脇役で登場することも、”乃南アサ”ファンには、
読まないわけにはいかない作品である。

構えることなく、スラスラと読める。
悩める女性にお勧めである。
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by l-cedar | 2010-02-26 22:19 | 感想文

果断 -隠蔽捜査2-

「果断 -隠蔽捜査2- 今野 敏 著 新潮文庫」
を読んだ。

米治郎の推薦度 ☆☆

竜崎伸也 東大法学部卒 国家公務員上級甲種試験合格
警察庁入庁 現在の階級:警視長 
警察庁長官官房総務課長から息子の不祥事により
警視庁大森署署長に異動。

題名にもあるように、今野敏さんの「隠蔽捜査」の続編である。
竜崎伸也がこの物語の主人公。最近は、テレビや小説で、
お馴染みであるが、俗に言う”キャリア”である。
しかも、東大法学部、彼は、東大以外は大学ではない、
と断言し、息子が東大以外を受けたいといっても、
認めず、息子は、麻薬に走ってしまい、それを
自首させ、警察庁長官官房総務課長という、
エリートの階段を上っているところで、大森署に左遷される。

この主人公、竜崎伸也が大森署々長として、
管内の小学校のPTAの集まりに呼ばれたときに、
発言を求められる。
竜崎伸也「可能な限りのことをやらせていただきます。
それはお約束します。さて、私たち警察があなたがたにして
差し上げることはすでに地域課長からも私からも申し上げました。
それでは、あなたがたは警察に対して何をしてくださいますか?」
中略。
PTA女史「でも、警察というのは、税金で働いているわけでしょう?
     納税者のために働くのは当然でしょう」
竜崎伸也「納税は憲法で定められた国民の義務です。私たちは、
     集められた税金と国債などを合わせた歳入の中から
     予算を割り当てられ仕事をしています。あなたたちから
     直接お金をもらっているわけではありません。
     納税者のために働けというのなら、私たちは
     高額納税者により多くのサービスをしなければ
     ならなくなります」
中略。
竜崎伸也「巡回連絡カードというのをご存知ですか?」
PTA  「はあ・・・・・・・?」
竜崎伸也「地域課の重要な役割に巡回連絡というものがあります。
     中略、地域課の係員が訪問した際に
     それに記入していただけくだけで、ずいぶん助かります」
PTA  「それはプライバシーの侵害じゃないですか?」
竜崎伸也「どちらかを選択すべき時に来ているのだと、
     私は思います」
中略。
竜崎伸也「そう、あなたがたがおっしゃるプライバシーというもの
     と、治安のどちらかです」
中略。
竜崎伸也「人々は村社会から自由になりました。村社会というのは、
     住民同士の関係が密な社会です。それがうっとうしいので、
     都会ではそういう関係から自由になろうとしたのです。
     それから教育の自由です。(中略)。私たちは子供の頃、
     よく先生に殴られたものです。だが、学校内での体罰に
     目くじらを立てるようになった。学校の権威から自由に
     なったわけです。そして、子供たちに個室を
     与えられるほど豊かになり、子供たちは家族から
     自由になった。(中略)、地域社会の崩壊、学校の秩序の
     崩壊です」
中略。
竜崎伸也「(中略)、豊かさと自由の代償として、私たちは
     そうした地域社会を破壊してしまったのです。
     (中略)、しかし、明らかに、今より治安はよかった。
     そうは思いませんか?」

話の筋には、あまり関係ないところなので、抜粋したが、
”竜崎伸也”という人をよくあらわしている。
そして、今の世の中に対して、作者が声を大にして
言いたいことを作者は、主人公に代弁させている。
     
竜崎伸也、彼のような人ばかりが、官僚になれば、
日本は、すごく変わる。しかし、それも絵物語だ。

にっぽん、ちゃ、ちゃ、ちゃ。

あっと、メインの話、立てこもり事件は、
意外な決着がつく。竜崎署長大活躍だ。

「隠蔽捜査」より、こちらの方が面白かった。
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by l-cedar | 2010-02-21 18:16 | 感想文

人生の岐路

毎年2月のこの時期、米治郎が朝、出勤で通る高田馬場駅、
早稲田大学の最寄り駅である為、受験生で混みあう。
改札口には、プラカードを持った学生が、バス乗り場の案内をして、
大声をはりあげている。しかし、雑踏にかき消され、声はなかなか通らない。
受験生は一目でわかる。親御さんと一緒の受験生もいる。
高校の制服姿もいる。見るからに地方から来たのもいる。
全国各地から早稲田大学を目指し、高田馬場駅に降り立つ。

さて、この大学受験、まさに、人生の岐路のひとつであろう。
この大学に入れるか、入れないか、
これで、間違いなく、その人生は変わってくる。

人生の岐路、「オギャー」と生まれた時から、
その人、その人、の人生の岐路がある、人生がある。

まず最初は、どういう親の元に生まれるか。
そして、どういう場所で育つか。
どういう学校へ行くか。
さらにもっと進んで、学校で、どういう先生に出会えるか。
そして、どういう友達に出会えるか。

どういう異性と知り合えるか。

どういう青春をおくるか。

どういう職業に就くか。

どういう異性を伴侶とするか、しないのか。

どういう朱夏をおくるか。

どういう転職をするか、しないのか。

どういう離婚をするか、しないのか。

どういう白秋をおくるか。

どういう老後なのか、どういう玄冬なのか。

思いつくだけで、たくさんの人生の岐路はある。
そして、それは、人それぞれである。
人間は、皆、平等ではない。
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by l-cedar | 2010-02-18 13:31 | 日々

氷結の森

「氷結の森 熊谷 達也 著 集英社文庫」
を読んだ。

米治郎の推薦度 ☆

相克の森
邂逅の森
に続く、熊谷達也さんの”森シリーズ”3部作の第3作目だ。

残念ながら、”☆”だ。
”相克の森”、”邂逅の森”に続く作品として、
米治郎、ちょっと、期待が大きすぎた。
特に、”邂逅の森”はすばらしかったので、ギャップが大きすぎた。

今度の舞台は、なんと、樺太からロシアへと辿る。
日露戦争後、秋田、阿仁の猟師(マタギ)、主人公の柴田矢一郎は、
従軍後、戦争に行く直前に結婚した妻シズの待つ家へ帰ると、
妻は、生後一ヶ月の赤ん坊を抱いていた。
明らかに、父親は、自分ではなかった。
そして、故郷を捨て、樺太へと渡る。

第3作は、今までと趣を変えて、冒険活劇だ。
しかし、熊谷達也さんの”森シリーズ”の三部作の
第3作としてはいただけない。
申し訳ないが、こういう話を、期待していなかった。
もちろん、楽しく読ませていただいた。
話としても面白かったし、ロシア革命を混ぜて、
樺太にいた日本人が虐殺された悲惨な史実を
物語に押し込んで、非常に読み応えのある展開だった。

”相克の森”、”邂逅の森”の”マタギ”という職業の
インパクトが大きすぎた。
その背景や挿話も、この今までの2作は良かった。
しかし、これは・・・。
3部作の3作目なのであろうか・・・。

だから、申し訳ないが、”☆”にさせてもらった。
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by l-cedar | 2010-02-16 18:51 | 感想文
民主党、驕るなかれ!
民主党、驕るなかれ!-2

今日(2010/02/15)、21時から、”ビートたけしのTVタックル”を見た。

まず、三宅久之さんの発言で、気になったこと。
たぶん(この通りではないが、ほぼこう理解した)、
「民主党に期待してはだめですよ」
じゃ、どの政党に期待すればよいのか?
社民党か?
国民新党か?
自民党か?
共産党か?
それ以外か?

三宅久之さん、好きだった。歯に衣きぬ発言で・・・。
でも、今日のこの発言で・・・。
「あんた、政治評論家でしょ、政治で食っているんでしょ?」
「ああいう発言、じゃあ、どうすりゃいいのよ?」
「その対案も言わないで、”何でも反対の野党”と変わらないじゃない。」
さらに、”何かうそっぽい感じ”の10人だかの視聴者(国民)代表に対して、
上から目線で、「何言っているの」と、いうようなことを言った。
何なんだ・・・、ちょっと、クエスチョンマークだった。

しかし、しかし、民主党・・・。
今日の”ビートたけしのTVタックル”で、取り上げた題材。
みんな”そう”思っている。
何じゃ、国会中継で見る政治家たちの”おバカ”ぶり。
あんたたち、”国民の代表”なんだよ。

そして、今日の”ビートたけしのTVタックル”の民主党代表、
特に、あの”総務副大臣”。

その反面、民主党の二人のうちのもう一人、
”参議院議員の人”、好感持てた、
だって、”総務副大臣”が、バカな間で
(視聴者(国民)代表が発言している時)、発言しようとした時、
総務副大臣の腕をつかんで、発言しようとするのを
抑えていた。
そして、発言も真摯で、良く相手のことを理解している気がした。

最初に、三宅久之さんが、発言するときに、
「ここにいる民主党の方は、良く勉強しているから」
と、言ったのは、この”参議院議員の人”のことだな、
と、思えた。

だが、だが、こども手当て、
視聴者(国民)代表は、”全員必要ない”だった。
”そう”だと思う。
民主党よ、全く、国民の視点からずれている。

自民党よ、さらにずれている。
”小沢問題”、”首相の母親手当て”。
”今は”、どうでも良いよ。

にっぽん、ちゃ、ちゃ、ちゃ、の、ちゃ、の、ちゃ。
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by l-cedar | 2010-02-15 22:34 | 民主党、驕るなかれ!

流転の海 ほか

「流転の海 宮本 輝 著 新潮文庫」
「地の星 流転の海 第二部 宮本 輝 著 新潮文庫」 
「血脈の火 流転の海 第三部 宮本 輝 著 新潮文庫」
「天の夜曲 流転の海 第四部 宮本 輝 著 新潮文庫」
「花の回廊 流転の海 第五部 宮本 輝 著 新潮文庫」
を読んだ。

米治郎の推薦度 ☆☆☆☆

文句なしの”☆☆☆☆”、大作である。

米治郎が、この大作を読み始めたのは、
池袋西武の本屋、文庫本の新刊コーナーで、
第五部の”花の回廊”を手にしたのがきっかけだった。
裏表紙のあらすじに、「昭和32年、松坂熊吾は~云々」とあった。
昭和32年、米治郎の生まれた年である。
しかも、これが第五部だという。
すぐに、新潮文庫のコーナーで、宮本輝さんの名を本棚に探した。
宮本輝さんは、今まで読もうと思っていたが、
つい後回しになっていた作家だった。
”流転の海”を見つけた。手に取って、少し読んでみた。
読みやすそうである。購入して、読み始めた。
すぐに嵌った。どんどん読み続けた。

戦前、四国の南宇和から大阪に出てきて、
中古自動車部品で財を成した松阪熊吾(まつざかくまご)の戦後、
50歳からの話である。終戦直後、裸一貫で大阪の駅に立ち、
かつて御堂筋にあった松阪ビルの焼け跡を眺めるところから
この壮大な話は始まる。

熊吾は、妻の房江(ふさえ)との間にずっと子供はいなかったが、
50歳にして、男の子が生まれる。戦前戦中は、
皇室以外はつけることができなかった”仁”という字を使い、
伸仁(のぶひと)と名付ける。
「お前が二十歳になるまでは絶対に死なん」と誓いを立てる。

夫婦とは、親子とは、父と子とは、母と子とは、
そして人間とは、を問い掛ける壮大なストーリーである。

第一部で、米治郎が、度肝を抜かれるのは、第一部の最後近く、
生まれて間もない伸仁がはしかと中耳炎と腸炎を同時に患い、
高熱を出し、母乳も受け付けなくなった時に、
庭で飼っている鷄の首をはね、毛をむしり取り、内臓を取り出し、
大鍋に湯を炊き、その中に鷄を入れて、
鷄のスープを作り、伸仁に飲ますところだ。
「やかましい、栄養注射なんかは気休めじゃ。
そんなもん、効きゃせんのじゃ。水は吐いても、
わしの作った鶏のスープは吐きゃせん。
もしそれも吐くようじゃったら、あいつはどっちにしても
死によるわい。そんなやつは、いっそ早よう死んだらええんじゃ」
と言って、スープを飲まし、伸仁は一命を取り留める。

第二部 ”地の星”では、舞台は、大阪から熊吾の故郷、
南宇和に移る。妻の房江と溺愛する伸仁が身体が弱いので、
自分の故郷の空気の良いところで生活しようということで、
家族3人で移り住む。
第二部は、熊吾の幼い頃の遊び相手、今は、広島でやくざになった
上大道(わうどう)の伊佐男が、子供の頃、熊吾と相撲をして、
投げ飛ばされ、足がビッコになり、それを逆恨みして、
熊吾をつけ狙う、それは、妻子にまで及ぶ。
面白いのは、熊吾が、4歳になった伸仁と姪の千佐子を連れて、
蝉取りに行き、畑で、伸仁が野壺にはまり、畑の持ち主に
文句を言いにいく。
「いま、わしの息子がはまって、危うく死ぬとこじゃった」
持ち主の家の曾祖母が出てきて、
「ここいらの子で、うちの野壺にはまる子はめったにおりませんでぁし。
みんな、どこにどんな野壺があるか知っちょりますけん」
「あの野壺に子供がはまったのは、わしが次女を生んだ年じゃけん、
明治三十七年やなぁし。それからあとは、誰も落ちちょらん」
「明治三十七年以後、あの野壺に落ちた子はひとりもおらんちゅうか」
中略
「その子はどうなった。明治三十七年に、お前んとこの野壺に
はまった子供はどうなったんじゃ」
「生きちょる、生きちょる。なんちゃ死んどらん。松坂熊吾っちゅう子供や」
これは笑えた。電車の中で読んでいて、ふきだしてしまった。
伊佐男が、やくざから追われ、自殺して、事は終わる。

第三部 ”血脈の火”では、再び、三人家族は大阪に戻る。
昭和27年、あと一ヶ月ほどで、伸仁は小学生になる。
熊吾は、雀荘や中華料理店などをはじめ、次々に事業を興していく。
伸仁は、土佐堀川沿いの家で、すくすくと育ち、父母より、
大阪の土地に馴染んでいく。近所のことは、土佐堀川を行き来する
船の乗員をはじめ、やくざにいたるまで、
すべて把握しているところが面白い。
しかし、洞爺丸台風で、地下倉庫が浸水して、
熊吾は、大損害を受ける。さらに追い討ちをかけるように、
中華料理店の最大顧客である電電公社の労使闘争に巻き込まれ、
繁盛している中華料理店も閉めることになる。

第四部 ”天の夜曲”、昭和31年、熊吾たち3人家族の舞台は、
大阪から富山に移る。第三部で、熊吾が助けた富山の
自動車部品販売業、高瀬の熱心な誘いに応じ、富山で、
一山上げようと家族で移り住む。
しかし、煮え切らない高瀬の態度に、富山をあきらめ、
妻子を富山に残し、熊吾は大阪へ戻る。
そして、次の事業の足係りを始める。
富山の地で、伸仁は、相変わらず、地域に溶け込むが、
妻の房江は、更年期障害も重なり、富山の地が耐えられなくなる。
熊吾は、大阪に戻り、大阪にいたとき、息子伸仁を連れて、
大阪で遊び歩いていた時に知り合った
ストリッパー、西条あけみに再会する。
そして、熊吾に生気が蘇る。
大阪にいたとき、京都祇園、京都競馬場、
はたまた、大阪の花街、果てはストリップまで、
小学生の息子、伸仁を連れて遊びまわるのが面白い。
伸仁は、さらに、ませた子供になっていく。

第五部 ”花の回廊”、再び、3人家族の舞台は大阪。
再起を図る熊吾、房江も働きに出て、
10歳になった伸仁は、熊吾の妹の家にあずけられる。
そこは、尼崎の蘭月ビルという安アパート。
朝鮮の人たちがたくさん住むそのアパートで、
伸仁は、そこへ溶け込んでいく。
伸仁の生まれたばかりの頃、死線を彷徨ったことが、
嘘のようなその環境、環境に順応していくさま。

第一部から第五部までで、10年しか経っていない。
しかも、物語に始まりは、50歳からだ。
第四部のあとがきの後の俳優で無頼の読書家で
有名な児玉清さんと宮本輝さんの対談、
そこで、宮本輝さんは、伸仁が21歳のときに
熊吾が亡くなることを明かしている。
と、いう事は、第五部が終わって、熊吾が亡くなるまで、
まだ、11年あるわけである。

米治郎、長男のアキラが生まれたのが、24歳のときだ。
まだまだ、人生経験はなかった。
松坂熊吾、50歳で初めて親になる。
50歳といえば、人生経験は豊富、さらに松坂熊吾である。
戦前に大成功して、財を築き、戦後も無一文になりながら、
世間に戦いを挑んでいく。
それを、事あるごとに、伸仁に教えて、語っていく。
すごく彼が羨ましかった。

この感想文の冒頭で、
”夫婦とは、親子とは、父と子とは、母と子とは、
そして人間とは、を問い掛ける壮大なストーリーである。”
と、述べた。
さらに言うと、全編を通して、”人間とは、二つに分けられる”と、
言っている。意地悪なことを言う人がいる。
しかし、善意を持った意地悪か、悪意を持った意地悪か、
判断することは難しいが、それが判断できれば、
どういう人か判断できる人になれる。
人間は、”善意の人”、”悪意の人”、この二つに分けられる。

さあ、あなたは、”善意の人”ですか?
それとも、”悪意の人”ですか?

どこまで続くのか、全くわからない。
だが、最後まで、この話に付き合おうと思う。
その覚悟ができた。
第六部、楽しみである。
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by l-cedar | 2010-02-14 22:40 | 感想文

サクリファイス

「サクリファイス 近藤 史恵 著 新潮文庫」
を読んだ。

米治郎の推薦度 ☆☆

「果断ー隠蔽捜査2ー 今野 敏 著 新潮文庫」が文庫化されたので、
本屋に買いに行った。新潮文庫の新刊コーナーで、”果断”の横に、
並んでいる自転車レースの写真の表紙の本が気になった。
近藤史恵(こんどうふみえ)さん、たいへん失礼だが、初めて聞く名前だ。
”第5回本屋大賞第2位”、”大藪春彦賞受賞作”とオビに書いてある。
さらに、”自転車ロードレース×青春×サスペンス”とある。
読まないわけにはいかないでしょう。

だが、初めての作家を読むのは不安である。
しかも、1969年生まれの女性、さらに不安は募る。

しかし、その不安は、少し読んで見事に裏切られた。

主人公の白石誓(ちかう)は、高校時代、オリンピックも期待される
陸上の中距離ランナーだった。そして、幼馴染の香乃という彼女がいた。
彼女の「私のために勝って」という言葉のために走り、勝ち続けた。
しかし、1番でいることに疲れ、彼女にもふられる。

たまたまテレビで目にした向日葵畑を行く自転車レース、
そこで、トップを行く二人の選手、前を行く青いジャージの選手と
ぴったりとつく黒いジャージの選手、
青いジャージの選手は明らかに疲れている、しかし、残り500mで、
黒い選手が青い選手に並び、握手して、
疲れているはずの青い選手が飛び出し、そのままゴールへ飛び込んだ。
テレビを見ていた誓は、八百長だと思ったが、後でこれが、
”エース”と”アシスト”だということを知る。
陸上選手として、肩に重みを感じていた誓は、これだと思う。
そして、陸上選手への道を捨て、大学で自転車部に入り、
プロの道へ進む。

物語は、誓が、”チーム・オッジ”、という自転車ロードレースの
プロチームに入り、そこには、石尾豪というエースがいる。
彼には、若いエース候補をわざと転倒させ、再起不能にしたとされる
黒い噂があった。

やがて、”ツール・ド・ジャポン”の6名の選手に、同期の伊庭とともに
選ばれる。誓が登りを得意とするクライマーに対して、
伊庭は、平坦、スプリントが得意な選手だった。
伊庭は、エース候補だが、誓はアシストだ。誓はアシストが好きだった。

自転車競技の選手の心理が主人公の誓を通して、克明に書かれている。
しかも、近藤史恵さんは、ロードレーサーに乗っているわけでもなく、
自転車レースも見たこともなく、この小説を書いたという。
しかし、”大藪春彦賞受賞作”である。前半の自転車選手としての
克明な心理を描き、わかりづらい自転車レースというものを
読み進めるうちに、ものの見事に、自転車レースを知らない
読者にもわからせてしまう筆致力である。

そして、気がつくと、まさに、ミステリーな展開になってくる。
このへんは本当に見事である。
米治郎より年齢が一回り下の近藤史恵さん、この年代の作家、
苦手意識が強かったが、非常に読みやすい文章で、
他の作品も読みたくなった。


なお、こちらに、少し詳しく、自転車好きの視点で書いた。
米さんの自転車日記
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by l-cedar | 2010-02-13 10:29 | 感想文