高田米治郎が”日々”の出来事や読んだ本について感想文を書きます。


by l-cedar
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灰夜

「灰夜 新宿鮫Ⅶ 大沢在昌著 光文社文庫」を読んだ。

米治郎の推薦度 ☆☆☆

米治郎としては前作”氷舞”の次に面白い。

鮫島のキャリアから、新宿署防犯課(現生活安全課)に
移るきっかけとなった公安部内部の暗闘、それに巻き込まれて
自殺した鮫島の同期キャリア”宮本”、その七回忌に彼の故郷を
訪ねる・・・。という裏表紙の紹介にあるが、冒頭は、
鮫島が動物の檻に閉じ込められ、寒さで目が覚めるところから始まる。
なぜ、閉じ込められたかを回想していき、檻から逃げ出すところで、
回想から現在のシーンに連なっていく展開は流石である。

第1作目から登場する鮫島に託された公安部の暗闘が綴ってあると
いう”宮本”の遺書、それが鮫島に託された経緯が”灰夜”で明らかになる。
しかし、内容は明らかにはされず、それはまた後のお楽しみであるようだ。
七回忌で鮫島は、宮本の旧友の”古山”、そして、さらにその妹の”栞”と
知り合う。その”栞”の言葉、「鮫島さんて、武史(宮本)さんとはまるで
違うタイプの人間です。(中略)たとえば、まちがっていることがあるとして、
まっ先に『まちがっている!』って指摘するのが武史さん。
そしてそれをなんと変えようとして、できないとなると、あきらめてしまう。
鮫島さんは、『まちがっている!』って騒がないかわりに、粘り強く、
変えていこうとするタイプに見えるわ」このセリフが鮫島を良く表し、
米治郎は非常に”人間を見る尺度”のひとつとして”なるほど”と思った。

麻薬取締官、県警の悪徳刑事、地元の暴力団、そして、北朝鮮。
鮫島は、警視庁刑事であるため、”宮本”の地元である地方都市では、
逮捕権も調査権もない、その中で、真実を追求していこうとする。
”宮本”から”遺書”を託されたことにより、警視庁公安部の暗闘に巻き込まれ、
七回忌を訪れたことにより、また、宮本から、地元での暗闘に巻き込まれる、
鮫島の運命、人間の運命とはこういうものなのかと思う。
鮫島のような刑事を描いていれば、いずれ避けては通れない北朝鮮問題、
見事に描かれている。”氷舞”と並び、たいへん読み応えがあった。
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by l-cedar | 2007-12-30 23:53 | 感想文