人気ブログランキング | 話題のタグを見る

高田米治郎が”日々”の出来事や読んだ本について感想文を書きます。


by l-cedar
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

ゾルゲ 引き裂かれたスパイ

ゾルゲ 引き裂かれたスパイ(上・下) 
原題:Stalin’s Spy: Richard Sorge and the Tokyo Ring
ロバート・ワイマント
著 西木正明 訳 新潮文庫」を読んだ。 

米治郎の推薦度 ☆☆☆

この本の主人公、リヒャルト・ゾルゲをご存じだろうか?
彼がいたから、今のヨーロッパ、今の世界があると言っても過言ではない。
この本、発刊時につい読み逸れてしまい、ずっと探していて、
ブックオフで手に入れて、読んだ。
西木正明氏の訳であることも興味をそそられていて、
どこの本屋を探しても見つけられなかったことを後悔していた。
リヒャルト・ゾルゲ、ウィキペディアにリンクしたので詳しくは
それを読んで欲しいが、太平洋戦争直前に特高警察によって
逮捕され、日本を震撼させたソ連のスパイである。

米治郎、ゾルゲのことは多少知っていた。
しかし、ドイツ人で、ドイツの記者で、日本のドイツ大使館に
出入りしていて、ナチス党員であったゾルゲが、なぜ、ソ連の
スパイだったのかが良くわからなかった。
この本を読んですべてを理解できた。

さて、冒頭のヨーロッパを救った話だが、ソ連は、西からは
ナチスドイツに攻められ、モスクワの直前まで攻め入れられていた。
しかし、東側の日本が怖くて、スターリンはシベリア側の兵を
ヨーロッパ側に送りこむことを躊躇していた。
シベリア側の兵を一気にヨーロッパ側に向かわせたのは、
ゾルゲの情報だった。「日本は絶対に攻めてこない」
この情報で、ソ連は、ドイツを巻き返し、一気に反撃に出て、
アメリカとともに、ヨーロッパをナチスから救えた。

酒飲み、女たらし、日本のドイツ人社会に溶け込み、
ドイツ大使の御意見番として君臨して、その情報を
ソ連に送っていたゾルゲ。
この本は、小説ではなく、残された文書などを忠実に
つなげているノンフィクションである。
米治郎は、ゾルゲとともに逮捕された尾崎秀実にも
興味を持っていた。
朝日新聞の記者だったことで、ある意味その思想は
理解できていたが、その後、中国研究の第1人者として、
当時の近衛内閣の嘱託として活躍して、逮捕時は、
満鉄調査部だったのである。
この辺の経緯がわからなかったが、良く理解できた。

ゾルゲと尾崎、当時の日本で良くここまで
スパイとしての活動ができたものである。
命を賭して・・・。
by l-cedar | 2012-04-30 16:41