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高田米治郎が”日々”の出来事や読んだ本について感想文を書きます。


by l-cedar
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銀のみち一条

銀のみち一条(上) 玉岡 かおる 著 新潮文庫」を読んだ。

米治郎の推薦度 ☆☆☆★

この読了感はなんだろう。
感動、納得、言葉、ということを思い浮かべる。
天涯の船”、”お家さん”に続く”明治の女”
シリーズとでも呼べる新潮文庫第三作目だ。
前の二作は”☆☆☆”だったが、さらに、
これが一番面白かったので”☆☆☆★”だ。
舞台は明治の生野銀山。この本を読んで初めて
生野銀山を知ったが、世界遺産になった石見銀山より
歴史は古く、開坑は平安時代の807年とされている。
三人の女と一人の男の話である。
生野銀山の病院のお嬢様、咲耶子、
生野銀山一の売れっ子芸妓、芳野、
咲耶子付きの女中、志真、生野銀山の坑夫、雷太。
この4人を子供の頃から描き、それぞれを絡めていき、
物語は進んでいく。純愛物語といっても良いストーリーだ。

「運命」と「惻隠の情」、この二つの言葉に集約される。
人の「運命」とは、”決められて”いるものでもあるが、
”決めていく”ものでもある。
「惻隠の情」、今の日本人に一番足りないものではないか・・・。
これを玉岡ひかるさんは、見事な筆致力で
三人の女と一人の男を通して描いていく。
敢えて、詳しいストーリーはここでは書かない。

”天涯の船”、”お家さん”同様、舞台となる明治からの
生野銀山の描写も、当然、物語の伏線にある。
平安の時代から脈々と続き、織田信長、豊臣秀吉
徳川家康が重要な財源としたのと同様、明治政府も
当初から重要な財源として、外国人を使い、
外国の技術を積極的に取り入れ、
生野銀山を国家の重要な糧として育てていった。
その様々な変化に右往左往しながら
一喜一憂して銀山で生きる生野の人々。

単純なラブストーリーに飽きた人におススメの
悲喜が溢れる玉岡かおるさんの傑作だ。
米治郎のようなおじさんにも十分堪能できる
絶対におススメの小説だ。
by l-cedar | 2011-09-20 08:00 | 感想文