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高田米治郎が”日々”の出来事や読んだ本について感想文を書きます。


by l-cedar
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ルーズベルトの刺客

ルーズベルトの刺客 西木 正明 著 新潮文庫」を読んだ。

米治郎の推薦度 ☆☆

さて、これも復習である。
先日読んだ”ウェルカム トゥ パールハーバー”と同じ、
西木正明さんの作品である。時代背景はほぼ同じで、
太平洋戦争前夜の上海が舞台である。
西木正明さんらしく、フィクションとノンフィクションを
良い感じで調合して復習だが楽しく読めた。

マヌエラという上海で有名だった実在のダンサーを
一方の主人公に、また、和田忠七という日本陸軍の
情報将校をもう片方の主人公に立てて、中国で
日本がユダヤ人を使って、アメリカのルーズベルト
大統領の暗殺を企てていたのかを描いている。

冒頭は盧溝橋事件のやり取りから始まる。
西木さんは、盧溝橋事件をこんなスパイスのきいた
史実として語られていることとは違う始まり方を
描き、まず、読者を引き込んでいる。
さらに、松竹楽学部のダンサー、山田妙子が
実は最初は、水の江滝子だったというところも
本当なのかと思いたくなるような描き方で、
盧溝橋から松竹楽学部と全く違う展開になり、
この小説の主題と、西木さんはどう結びつけて
来るのかと、思いながら読み進めることができる。

一方の和田忠七、最初は野戦重砲隊の将校として
登場する。ある諍いから情報将校である影佐大佐の
目にとまり、情報将校として上海で地方人(軍隊用語で
民間人のこと)に扮して、活動を始める。
この辺から、読者の興味は、和田と山田がいつどのように
交差してくるのかへの興味をかきたてていく。

当時の上海には、ナチスドイツの迫害から逃れるために
多くのユダヤ人がいたようだ。それを日本は、満州の一部を
ユダヤ人の為にとニンジンをぶら下げて、利用したようだ。
そして、この計画にもユダヤ人は利用される。

非常に興味深い題材で、こういうことが本当にあったのか、
なかったのか?西木正明さんらしい面白い小説だった。
by l-cedar | 2011-09-15 08:00 | 感想文【復習】