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高田米治郎が”日々”の出来事や読んだ本について感想文を書きます。


by l-cedar
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沈底魚

「沈底魚 曽根 圭介 著 講談社文庫」を読んだ。

米治郎の推薦度 ☆☆

現役国会議員の中に中国のスリーパー(沈底魚)がいる。
そんな情報が、警視庁公安部外事2課にもたらされた。
裏表紙のあらすじ、そして、江戸川乱歩賞受賞作と
いうことにひかれて読んだ。
スリーパーというのは、相手国で、普通に生活していて、
機が熟すのを待ち続け、その時が来ると、
本国からの指令により、スパイとして活動する
潜入スパイのことだ。
洋モノでは、良くある題材で、第2次大戦ものや、
東西冷戦時代のものなど多い。
しかし、日本の小説でスリーパーモノは
あまり目にしたことがなかった。

この記事を書くにあたって、少し、
ネット上のレビューを読んでみた。
”どんでん返しの連続”と書いてあるものが多かったが、
米治郎的には、冷や冷やドキドキするほど、
「え”ーっ」的などんでん返しは残念ながらなかった。
刑事モノで、かつ公安モノなので、死人が出るのは
仕方ないが、おぞましい殺人は、全くなく、
心臓が弱い人でも安心して読んでいける。
そして、期待するほどのどんでん返しはなくても、
ストーリーはしっかりしていて、また、文章も
わかりやすく、米治郎的に安心して読んでいける
新しい作家さんの一人として覚えておこう。

尖閣問題を踏まえての今の中国との問題、
それを見透かしたかのような現代を舞台とした公安と中国とのやり取りを、
さらには、アメリカとのやり取りも混じり合ってきて、交錯していく
ストーリーは読んでいて、スパイものフリークの気持ちをかきたてる。

実際に、警視庁公安部にこういう仕事をしている人がいるのか
と、想像力をかきたてる。さらに本当にいるとしたら、
この平和ボケの現代日本で、仕事として、日本のために
命のやり取りをしている人がいるのかと思ってしまう。

今、どこの本屋でも店頭に山積みで売られているのは、
納得できる面白い一冊である。
by l-cedar | 2010-12-11 17:40 | 感想文