「借金取りの王子 -君たちに明日はない2- 垣根 涼介 著 新潮社文庫」
を読んだ。
米治郎の推薦度 ☆☆☆
「君たちに明日はない」の続編である。「君たちに明日はない」と
この「借金取りの王子」、垣根涼介ファンなら、絶対に外せない作品である。
企業から、社員のリストラ事業を請け負う会社、
『日本ヒューマンリアクト(株)』の村上真介が主人公、
第一作と同じく、短編集である。
第一作の「君たちに明日はない」を読んだ時、こういうリストラ請負会社が
本当にあるのかと思った。
それほど、フィクションなのに、背景にリアリティがある。
その点、堂場瞬一さんの警視庁失踪課に通じるものがある。
今回は主人公の村上真介が、デパート、生保、消費者金融、
ホテルチェーンから請け負ったリストラの面接をこなしていく4つの話、
そして、最後の5話目は、『日本ヒューマンリアクト(株)』が
人材派遣業に進出していく話と、さらにリアリティをおびていく。
これは、続編に続く展開の予感である。
さて、その中で、3話目、この本のタイトルにもなっている消費者金融の話、
「借金取りの王子」、良い話だ。
このシリーズの常で、各々の話は、そのリストラを依頼した企業のある
リストラ対象者が主人公になる。
この話、何の予測もせずに、その部分、朝の山手線で読んでいた。
それは、急にやってきた。目がウルウル、危うく、頬を伝わりそうになった。
そういう展開ではなかったのに、急に泣かせるテクニック、さすがである。
しかも、全編に溢れる男女の会話のやり取り、会話だけでなく、
その裏にあるお互いの感情の表し方、全く恐れ入る。
「ワイルド・ソウル」とは、反対側にある話だが、
サラ公には、共感できることも多く、垣根涼介さんの懐の深さ、
ひきだしの多さを感じることができる。
サラ公必読である。