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高田米治郎が”日々”の出来事や読んだ本について感想文を書きます。


by l-cedar
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デッドライン-2

よく言われていることであるが、”戦争”は
技術の進歩をより早くする。その典型は、
これもよく言われていることだが、”飛行機”である。
第1次大戦で飛行機が使われ、この時の飛行機は、
オープンカーのように、前に風防があるだけで、
吹きさらしであったから、爆撃は、爆弾を手で持って、
狙いをつけて落とす(手から離す)ようなことをしていたらしい。
飛行機同士の戦闘もあったらしいが、騎士道精神に則った
規律正しい戦いで、相手を殺すというより、落とすことが
目的で、低空で飛んでいたから、命の危険も少なかったようだ。
それが、第2次大戦で、飛躍的に技術が進み、爆撃機、戦闘機、
攻撃機、艦上機(艦載機)などそれぞれ専用機となり、大戦末期には
ジェット機やロケット機、ミサイルの原型のなるロケットも出てきて
飛躍的に進歩した。

さて、今回読んだ「デッドライン」だが、上巻の冒頭は、
世界初のコンピューター「エニアック(ENIAC)」の開発に
主人公の”ミノル”が関わっている。ここで、”エニアック”の
開発の中心である実在のジョン・エッカートとジョン・モークリーも
登場させている。ここで、世界初のコンピューターである”エニアック”は
軍の命令で開発が進められ、その主たる目的が、陸軍の大砲の弾道計算で
あるとのことである。
米治郎、この業界の片隅にいる。戦争がコンピューターを作らせたことを
予想はしていたが、確信がなく、このような歴史に考えを
めぐらせていなかったのでそこの部分もたいへん興味深く読めた。
さらに、下巻の最後、場面は、2005年8月5日、ワシントンD.C.の
スミソニアン博物館、そこに、”ミノル”と結婚して老婦人となった”エリィ”、
彼女が日本への”ミノル”との逃避行で探しにいった息子”トオル”、
さらに”ミノル”との間に生まれた”アキラ”が伴っている。
展示されている「エニアック」の前に立つと、老紳士が、
その機会を説明したそうに近づいてくる。上巻冒頭で”ミノル”を
”エニアック”の開発にリクルートしたペンシルバニア大学の
同級生”ケリー・オニール”だった。彼は、戦後、IBMのセールスを
していて、世界中にIBMの名機360、370を売り歩き、
日本支社長にもなったが、唯一日本だけは、富日通(富士通?)の
名機8150機に阻まれ、良いセールスを上げられなかったことを話し、
目の前にいるのが、その開発者である”トオルタガワ”であることに気づき、
さらにその隣にいるのが、携帯電話やデジタル家電の分野でのOSを作った
”アキラタガワ”であり、二人は”エリィ”から”ミノル”の息子であることを
聞かされ、呆然とする。
ここで、”オニール”の言葉として、「日本は不思議な国だった。(中略)日本は
戦争で何もかもなくなったくせに、なぜあの時期すでに、
わが国のコンピューターと対抗できる機械を作り出すことができたのか、
いまだにわからん。(後略)」
このセリフで、日本の戦後の目覚しい復興を言い尽くしていると思う。
「アメリカに追いつけ、追い越せ」、この言葉を合言葉として、
戦後、日本を世界の中心的存在まで押し上げた人たち、
コンピューター業界然り、自動車業界然りだ。
トヨタは、とうとう巨人、ゼネラルモーターの生産量を上回り、
世界一になった。”去年”の文字”偽”だったが、日本人が、
戦後復興の気持ちに帰って、みんなで、真面目にもう一度この国を見直し、
考え、やり直せば、その土壌はあるのである。
そういうことを考え方をさせてくれた本だった。

にっぽん、ちゃ、ちゃ、ちゃ。
by l-cedar | 2008-01-13 08:49 | 日々