遠ざかる祖国
2005年 07月 31日
逢坂剛氏の「遠ざかる祖国」を読みました。第2次大戦前後のスパイもの、好きなんです。陸軍中野学校出身の北都昭平がスペインを舞台に活躍する「イベリアの雷鳴」に続く第2弾です。北都昭平の設定がまず良いです。「ペルー国籍の宝石商」という隠れ蓑をかぶり、「イベリアの雷鳴」で、スペイン人と結婚してスペイン国籍まで手に入れます。逢坂氏の小説は「カディスの赤い星」などスペインを舞台にするものが多く、日本を舞台とするものでもスペインがらみのものがものすごく多く、逢坂氏のスペインへの愛着(愛着なんてそんな言葉で表して良いかわかりませんが・・・)が伺われます。逢坂氏の作品との出会いはいわゆる「百舌」シリーズです。その作家のひとつの小説を読んで、面白いと、はまってどんどん読んでいきます。逢坂氏もはまっている作家の一人です。スペインへの造詣の深さからスペインの近代歴史で、スペイン内戦は避けて通れない題材で、逢坂氏は果敢に挑み、いくつかの作品を世の中に送り出しています。しかもその作品には日本人を必ず登場させます。このような作風で、逢坂氏がこのような時代背景からスパイものが好きな私が、スパイものを書いてくれないかな、と思っていたら出てきた作品が「イベリアの雷鳴」でした。しかも、一作品だけではなく、続き物になるとのことで、楽しみにしていたら第2作目「遠ざかる祖国」、最高でした。特に、第一作「イベリアの雷鳴」から続く、イギリス秘密情報部MI6のスペイン支局の情勢情報部員、ヴァジニア・クレイトンとの情報戦から、本当の恋愛に発展していくやり取りとそれぞれの心の葛藤の描写は、ちょっとした恋愛小説で、さらにイギリス情報部のMI5、MI6の本部の描写や、ドイツ国防軍情報部、アプヴェアとのやり取りなどは、海外小説の和訳を読んでいるようです。ぜひご一読を!
by l-cedar
| 2005-07-31 17:15
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